コラム(庄司 満 教授)

①高機能で地球にやさしい素材

アミノクレイの基本骨格は、ケイ素、酸素、亜鉛やマグネシウムなどで構成される、一辺が数百ナノメートルの板の片面に、親水性のアミノ基が並んだ板状構造です。この板と板の間にはたらく静電的相互作用で多層構造を形成し、菌やウイルスの“カラ“を破壊して、抗菌・抗ウイルス作用を示します。驚くべきことに、この効果は約1か月間持続することがわかりました。

 アミノクレイは、その多層構造の板と板の間に、水分子やアスコルビン酸(ビタミンC)を取り込むことができます。この板が少しずつ剥がれていくときに、内部に取り込まれた分子が徐々に放出されることにより、保湿力や抗酸化力が長期間持続します。このように、分子が出たり入ったりできるアミノクレイの機能を活かし、数種のビタミンや抗酸化・保湿成分を配合したシャンプーをはじめ、トリートメント、ボディーソープ、洗顔フォーム、美容液や、アミノクレイを構成する金属原子をセリウムに換えた、日焼け止め効果のあるクリームなどが開発されています。今後、さまざまな物質を搭載したアミノクレイの、機能性材料としての開発が期待されています。

 現在開発が進んでいるナノカプセル技術は、一般的に、ナノスケールの球状カプセルに化合物を封入し、標的部位に運んでから放出する手法です。ナノカプセルの弱点の1つは、カプセルを構成する物質の量に対し、運べる物質の量が少ないことです。一方、アミノクレイは板状・層状構造の特長を活かし、取り込める物質量が格段に多くなっています。

 アミノクレイは、機能が優れている上、人体への安全性が第三者機関で認められています。また、アミノクレイは水溶性のため水に溶けやすく、自然界で分解される生分解性と同じように最終的に自然に還るので、環境への負荷が小さいとされています。高機能で地球にやさしい、アミノクレイの活躍が注目されています。


②今、求められている素材

ウイルスの感染拡大防止のために、検温、マスクの着用、手洗い・手指消毒が欠かせない日々が続いています。ウイルスは目では確認できないほど微小で、知らない間にウイルスに触れたかもしれないという恐れから、頻繁に手洗い・消毒をしている方も多いことでしょう。外出すれば、建物やお店の入り口など、いたるところに消毒用のボトルが置いてあり、見るたびにプシュッと一押ししてしまいます。

 衛生上はこれで良いのですが、消毒薬の主な成分はアルコールであり、これが皮膚の乾燥を防止している脂分を溶かしてしまいます。さらに、アルコールに敏感な場合は、肌に炎症を起こしてしまうなど、アルコールには負の側面もあります。

 そもそも、なぜ頻繁にアルコール消毒をしなければならないかというと、消毒成分であるアルコールは、塗った場所からすぐに揮発し、なくなってしまうからです。そこで、「殺菌・ウイルス不活化効果が持続する」かつ「人体に安全」で、「環境への負荷が低い」成分の開発が求められていました。Save MEのアミノクレイは、これら3つの条件をすべて満たしているといえます。

 さらに、ナノサイズの板状の形をしたアミノクレイには、保湿力があります。これは、ミルフィーユ状のアミノクレイがバラバラになって水を取り込み、水分を留めておく、というイメージが合っていると思います。うれしいことに、アミノクレイは皮膚だけでなく、ベッド、ソファ、テーブルなどの布・革製品にも使用可能で、殺菌・ウイルス不活化効果が約1ヶ月持続することがわかっています。

 アミノクレイは、菌やウイルスの“カラ”を破り、その効果を発揮します。また、有効成分が揮発しにくく、効果が長続きする分子構造になっています。アミノクレイの人体への安全性は第三者機関で認められている上、環境への負荷が低いことも、使う側にとってうれしいですね。さらに、製品パッケージや包装資材には、できる限り環境負荷の少ないクラフトパウチや自然界で分解される生分解性プラスチックを使うなど、環境に対する企業の姿勢が感じられることも、本製品を選ぶ決め手となるのではないでしょうか。

 「効果の持続性」「安全性」「環境への配慮」という、いまの消毒薬に求められている条件をかね備えた製品が、アミノクレイといえるでしょう。

 

 

庄司 満(しょうじ みつる) 教授 
【横浜薬科大学薬学部教授・創薬研究センター長】

学歴
平成6年 東北大学理学部化学第二学科卒業
平成8年 東北大学大学院理学研究科博士課程前期課程化学第二専攻修了
平成11年 東北大学大学院理学研究科博士課程後期課程化学専攻修了
「学位:博士(理学)」
職歴
平成11年 米国スクリプス研究所 博士研究員
平成13年 東京理科大学工学部 助手
平成18年 東北大学大学院理学研究科 講師
平成21年 慶應義塾大学薬学部 准教授
平成29年 横浜薬科大学薬学部 教授(現在に至る)